先物被害詳細

先物取引は、極めてハイリスクな取引であり、高度の危険性を取引自体に内在しています。そして、先物業者の巧みな勧誘によって先物取引に引き込まれ、莫大な損失を被る人は後を絶ちません。確かに、最近、先物取引に対する法規制が整備され、先物業者に対する行政の監督も強化されてきました。しかし、それでもなお、先物取引に無知な高齢者や投資未経験者等が、先物業者のいわゆる「客殺し」商法により莫大な損失を被るという被害事例は、全国的に非常に多数実在します。これまで私は、多種多様な先物取引被害の解決に数十件取り組み、数多くの先物取引業者から顧客の被った損害金を少なからず返還させてきました。もちろん先物業者から損失全額が返還させることは簡単ではなく予断を許しませんが、顧客の被害を十全に救済し、先物業者の不正な利益を全て吐き出させるためにも、全額返還(過失相殺なし)を目指して、先物取引被害の回復に取り組んでいきます。

先物取引被害の原因

1. 第一に、取引自体に高度の危険性が内在していることが挙げられます。

先物取引は証拠金取引であるため、総取引額の3~10%程度の証拠金を拠出するだけで、多額の取引を行うことが可能です(いわゆるレバレッジの存在)。そのため、僅かな値動きにより預けた証拠金全部が無くなってしまうおそれがあり、しかも、商品の値動き自体が激しいため、短期間で巨額の損失を被ってしまう可能性が高いのです。

2. 第二に、先物業者が、いわゆる「客殺し」商法を行っていることが挙げられます。

先物業者は、「必ず儲かります」との執拗な電話勧誘から始まり、取引勧誘段階、取引継続段階、取引終了段階と、会社ぐるみで「客殺し」商法を遂行するのです。そして、「客殺し」商法とは、先物業者が、さまざまな違法行為(執拗・迷惑勧誘、適合性原則違反、新規委託者保護義務違反、無意味な反復売買、利益金の証拠金振替、仕切り拒否・回避など)を駆使することにより、手数料稼ぎを行って自らの収益を上げ、顧客に過大な取引をさせ追い証拠金を次々と要求するなどして、結局、顧客の資金が尽きてしまうまで上記違法な手口が繰り返されるというものです。

3. 第三に、先物被害に遭遇した人の特殊な心理状態が挙げられます。

最初は少額で取引を行うつもりが、気付いたときには余裕資金を遥かに上回る入金(追い証など)をさせられて、非常に混乱し、冷静な判断が不可能な状態に陥ってしまうのです。また、特に先物取引の未経験者の場合には、外務員を信用せざるをえず、たとえ損失が出たとしても、引き続き取引内容について外務員に依存せざるをえないのです。

先物取引の種類と法規制

1. 国内公設市場における商品先物取引

ア 概要

商品取引所法に基づいて主務大臣の許可を受けて設立された商品取引所における商品先物取引です。現在、東京穀物商品取引所、中部大阪商品取引所、関西商品取引所、東京工業品取引所の、4つの取引所があります。上記商品取引所では、石油製品、貴金属等の合計約30種類の商品や商品指数が上場されています。

イ 法規制

商品取引所法、同法施行令(政令)、同法施行規則(省令)、商品取引所による規制(受託契約準則など)、主務省(経済産業省、農林水産省)が定める商品先物取引の委託者の保護に関するガイドライン、日本商品先物取引協会が定める自主規制(受託等業務に関する規則、受託業務管理規則制定に係るガイドラインなど)があります。

ウ 商品取引所法の平成16年改正

商品取引所法は、平成16年に改正され(平成17年5月1日施行)、主に委託者保護のための規制が強化されました。
第一に、適合性原則の規制が強化されました。顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当な勧誘を行ってはならないことが明確に規定されました(同法215条)。
第二に、不当な勧誘行為が明文化されました。商品先物取引の勧誘に先立ち、先物業者は、顧客に対し、商品先物取引の勧誘であることを告知した上で、顧客が先物取引の勧誘を受ける意思があることを確認しなければ勧誘できず、これを拒絶した顧客に対しては勧誘ができないことが明記されました(同法214条)。また、両建てに対する規制が強化され(同法214条)、向かい玉の規制も強化(省令103条2号)されました。
第三に、受託契約の締結前の説明義務が具体化されました。先物業者は、受託契約を締結する前に、顧客に対し、商品先物取引の仕組み(レバレッジ性)や損失リスクを説明しなければならず、書面を交付しなければならないのであって、先物業者が説明を怠った場合の損害賠償責任も規定されました(同法217条、218条)。
また、改正商品取引所法の施行にあわせて、主務省が商品先物取引の委託者の保護に関するガイドラインを定め、具体的にどのような場合が違反行為に該当するかにつき、適合性原則違反、不当勧誘規制、説明義務のそれぞれに関し、明確に示しました。

2. 商品先物オプション取引

ア 概要

オプションとは、予め定められた期間(権利行使期間)内に予め定められた価格(権利行使価格)で対象商品を売ったり買ったりできる権利のことをいいます。そして、売る権利のことをコールオプション、買う権利のことをプットオプションといい、対象商品が先物取引(原市場)の売買約定(建て玉)の場合が、先物オプションといいます。
オプション取引とは、上記コールオプション及びプットオプションを売買する取引のことをいい、それぞれ買い手(バイヤー)が売り手(グランター)に対し、代金(プレミアム)を支払って、オプションを取得し、売り手は買い手の請求に応じる義務を負担することになります。
現在、先物オプションは、国内公設の商品取引所では、東京工業品取引所で金、東京穀物商品取引所でとうもろこし等が上場されています。

イ 法規制

国内公設市場の商品先物オプション取引は、商品取引所法の対象商品とされ(同法2条10項)、商品先物取引と同様の規制がなされています。

3. 海外商品先物取引

ア 概要

海外の各種商品取引所における先物取引のことをいいます。顧客から注文を受けた日本の業者が海外の業者に注文をつなぎ、海外の商品取引所においてその売買取引を執行するというものです。業者が取り次ぐ海外商品  先物市場としては、米国のニューヨークやシカゴの取引所が多いです。
しかし、顧客の注文が本当に海外市場に取り次がれているかについては、不明朗な点が多く、詐欺的業者が多数存在するのも実情といえます。

イ 法規制

「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」による規制がされています。同法では、書面交付義務(4条~7条)、不当な行為の禁止(10条)、契約締結日から14日を経過しなければ原則として顧客の注文を受けられないこと(8条)等が規定されています。しかし、同法の規制の対象は政令で指定された海外市場の先物取引のみであって限定されており、主務省の許可・登録制等の参入規制も全くなく、業者の財務の健全性を担保する規制もありません。このように、同取引に対する法令規制は不十分であるといえます。

4. 海外商品先物オプション取引

ア 概要

海外の各種商品取引所における先物オプション取引のことをいいます。
業者から「損は限定的、利益は無限大」、「ローリスク・ハイリターン」等として勧誘されることが多い取引ですが、その仕組みは極めて難解で、高度の危険性があります。高額な手数料が取られることも顕著であり、これまで多数の被害が発生しています。

イ 法規制

海外商品先物オプション取引については、現行法上、これを規制する法令がありません。そのため、不招請の無差別電話勧誘により高齢者や若年者等が執拗な勧誘を受け、莫大な損失を被らされるという被害事例は後を絶ちません。この取引を主な業者は数社が知られていますが、これらの業者は、多数の顧客から提訴され、今も多くの裁判を全国的に抱えているというのが実情です。

先物取引被害における違法性

先物取引被害における違法性は、取引勧誘段階、取引継続段階、取引終了段階の各段階において認められるものです。これら違法性は複数組み合わさって認められるのが通常であり、全体として、会社ぐるみの「客殺し」商法を推認させるものといえます。

1. 取引勧誘段階

ア 適合性原則違反(法215条、ガイドラインA2・3、受託等業務規則3条・5条1項1号)

適合性原則とは、顧客の知識、経験、財産の状況に照らして、不適当と認められる内容の取引を禁じるものです。適合性原則は、単に不適合な者を勧誘してはならないという消極的な不作為義務にとどまらず、積極的に顧客の属性(知識、経験、財産、投資意向等)の調査義務を含むと解されています。

イ 説明義務違反(法218条・217条、ガイドラインC2、省令108条・104条、準則3条2項、受託等業務規則5条1項4号)

平成16年商品取引所法改正により、法律上、説明義務の内容が具体化されました。これにより、①取引の額が取引証拠金等の額に比して著しく大きいこと、又は、②相場の変動により損失が生じることがあり、且つ、その損失額が取引証拠金等の額を上回ることとなる恐れがあることの説明をしなかったときには、損害賠償義務を負う旨が規定されました。これは、書面交付義務とは別の義務であって、委託のガイド等の書面を交付するだけでは当該説明義務を尽くしたことにはならず、また、抽象的にハイリスク・ハイリターンである旨を告げるだけでは、当該説明義務を尽くしたことにはなりません。

ウ 断定的判断の提供等(法214条1号・2号、ガイドラインC3)

断定的判断の提供とは、「必ず」又は「絶対」(儲かる)などといった、まさに断定的表現を伴うものに限定されるわけではありません。このような表現を伴わなくても、前後の文脈から総合考慮すれば、顧客をして、例えば「値上がりは間違いなく、利益を生じることは確実である」旨、誤信させるものであれば、断定的判断の提供として違法であるといえます。

エ 迷惑勧誘(法214条6号、ガイドラインB3)

夜間や早朝等の迷惑な時間帯に、電話又は訪問による勧誘を行うことや、顧客の意思に反して長時間に亘る勧誘を行うことは禁止されています。

オ 勧誘目的不告知、勧誘受諾確認義務違反(法214条7号、ガイドラインB1)

先物業者は、勧誘に先立って、自己の会社名及び商品先物取引の勧誘である旨を告げなければならず、併せて、勧誘を受諾する旨の顧客の意思を確認しなければなりません。

カ 再勧誘禁止(法214条5号、ガイドラインB2)

顧客が勧誘を受けることを希望しない旨の意思表示をしたにもかかわらず、継続して勧誘することや、その後改めて電話や訪問により勧誘することは禁止されます。

キ 事前書面の不交付(法217条、ガイドラインC1、準則3条1項)

 

2. 取引継続段階

ア 新規委託者保護義務違反(法215条、ガイドラインA5、社内管理規則)

新規委託者保護義務とは、先物取引の難解さと高度の危険性から、新規委託者の保護育成を図るため、一定期間を習熟期間として、その間の建玉を一定枚数以下に制限するなどして、その期間中に先物取引の仕組みや危険性を理解させなければならないという一般的注意義務のことをいいます。この点従来は、先物業界の自主規制基準に基づき、この一定期間については原則として3ヶ月間とされており、建玉枚数の一定数については原則として20枚とされていました。平成10年に商品取引所法が改正された後は、各社により上記基準はまちまちとなりましたが、新規委託者保護の要請は強まることはあっても弱まることはなく、上記基準は尊重されるべきものといえます。そして多数の裁判例が、新規委託者保護義務違反の違法性を認めています(東京高判平15・9・11等)。

イ 無意味な反復売買(特定売買)

短期間に頻繁な売買を行うことをいいます。取引の中に、特定売買といわれる取引手法が多く認められれば、内容的に不合理で、無意味な取引が反復されたものと推認されます。このような無意味な反復売買は、まさに先物業者の手数料稼ぎによる「客殺し」商法を徴表するものにほかなりません。
特定売買とは、売(買)直し、途転、日計り、両建、手数料不抜けの5種類の取引のことをいいます。このうち、売(買)直しとは、既存建玉を仕切るとともに、同一日内で新規に売直し又は買直しを行っているものをいいます。途転とは、既存建玉を仕切るとともに、同一日内で新規に反対の建玉を行っているものをいいます。日計りとは、新規に建玉し、同一日内で手仕舞いを行っているものをいいます。両建とは、既存建玉に対応させて、反対建玉を行っているものをいいます。手数料不抜けとは、売買取引により利益が発生したものの、当該利益が委託手数料より少なく、差引損となっているものをいいます。
これらの特定売買は、無意味な反復売買の判断基準として、かつて主務省である農水省が実施していたチェックシステム及び旧通産省が実施していたミニマムモニタリング(MMT)において指摘されました。
そして、これら5種類の特定売買が、全体の取引においてどれだけの割合を占めているか(特定売買比率)を分析することにより、取引内容の不合理性、無意味性を推しはかることができます。また、委託者の差引損失合計に対する委託手数料合計の割合を示す手数料化率を分析することにより、業者が如何に手数料稼ぎを行ったかを推しはかることができます。さらに、売買の月間回転率を分析することにより、月にどれだけの取引が反復され、頻繁売買が行われたかを推しはかることができます。
上記の特定売買比率が20%程度、手数料化率が10%程度、売買回転率が3程度を超える数値であれば、原則として、無意味な反復売買が行われたことを客観的に推認することができるといえます。
裁判例にも、上記のような分析手法を採用した上で、無意味な反復売買(ころがし)であると認め、取引の違法性を認定したものが多数あります。

ウ 両建(同一限月同一枚数両建につき法214条8号、異限月異枚数両建につき省令103条9号)

両建とは、既存建玉に対応させて、反対建玉を行っているものをいいます。両建は、先物業者から有利であるといって勧められることが多いのですが、以下に述べるように有害無益というべきものです。
まず、両建をすると、その時点で一旦損失が固定することになるので、実質的には手仕舞いをしたのと同じ結果となるにすぎません。しかし、手仕舞いなら本来かからない委託証拠金及び手数料が、両建をするためには必要となってしまいます。また、両方の建玉を共に有利な時期を見極めて決済することは極めて困難であり、そのような判断は委託者には不可能に近いといえます。さらに、先物業者は、両建をすれば損失が確定しないかのような説明をし、顧客もそのように錯覚させられる結果、いずれは損失を取り戻せると期待して、先物業者が言うとおりに取引を継続しなければならない状態に陥ってしまうのです。
両建については、同枚数、同限月の両建の勧誘が禁止されています。また、平成16年の商品取引所法改正により、枚数違い又は異限月の両建についても、取引等を理解していない顧客からその委託を受けることが禁止されました。

エ 利乗せ満玉

利乗せ満玉とは、利益が発生した場合において、小刻みに建玉の決済を行って利益を発生させるものの、それら利益を顧客に返還せず委託証拠金に振りかえて、建玉可能な限度額いっぱいの取引を行って、取引を継続させる手法のことをいいます。先物業者は、顧客にたとえ利益が出ても返還せず、それら利益を全て投入させて次々と新たな取引をさせ、手数料稼ぎを行うのです。

オ 無敷、薄敷(法179条、準則7条・11条)

無敷とは、顧客から必要な委託証拠金の入金を受けないで建玉を先行させ、後で顧客にその入金を迫るという手法です。薄敷とは、顧客から一部の委託証拠金の入金しか受けないで建玉を先行させ、後で顧客にその入金を迫るという手法です。これらの取引手法は、顧客の資金力を超えて、過当な取引を行わせるとともに、先物業者の手数料稼ぎに結びつくものといえます。

カ 適合性原則違反(不適合な建玉等。法215条、ガイドラインA2・3、受託等業務規則3条3項・5条1項1号)

先物業者は、取引開始後においても、委託者の知識、経験、資産、収入等の属性に照らして、不相応に過大または頻繁な取引を行わないように配慮すべき義務を負っています。すなわち、先物業者は、委託者が取引を開始した後においても、常に、取引枚数や取引証拠金の額、取引の頻度等が、委託者の属性(知識、経験、資産、収入等)に照らして過大なものとなっていないかにつき、注意すべき義務を負っているのであり、これに反する過当な建玉を勧誘してはならないのです。

キ 無断売買、一任売買、実質的一任売買(省令103条3号、法214条3号、準則25条)

無断売買は、顧客に無断で建玉等取引を行うことであり、違法であることはいうまでもありません。
一任売買は、先物業者の意のままに取引が行われていることを意味し、その結果、顧客の利益を無視した手数料稼ぎの温床となるものにほかなりません。実質的一任売買についても、同様に、先物業者の言うとおりに取引が行われる結果、手数料稼ぎがなされているものといえます。

ク 向い玉(省令103条2号)

 

3. 取引終了段階

ア 仕切拒否・回避(省令103条7号、受託等業務規則5条1項6号)

仕切拒否とは、委託者からの仕切指示に従わないことをいい、仕切回避とは、委託者が仕切ってほしいと言っているのに言葉巧みにこれを回避することをいいます。これらは、取引を終了したいという委託者の意思に明確に違反して取引を継続させるものであり、先物業者の手数料稼ぎに向けられた行為にほかならないといえます。

イ 精算金の支払い遅延

 

被害回復の流れ

  1. 1.初回相談
    事案の概要等について弁護士が事情を聴取します。取引継続中の場合は、手仕舞いに向けた準備をします。場合によっては、外務員とのやりとりを証拠化しておきます。
  2. 2.受任通知
    先物業者に対し、弁護士が受任した旨を通知します。取引継続中の場合は、手仕舞い指示も同時に行います。併せて、委託者別勘定元帳(イタカン)と委託者別証拠金現在高帳(ダカチョウ)を送付するように請求します。なお、先物業者による証拠の改ざんを予防するために、証拠保全を行うこともあります。
  3. 3.事実関係の聴き取り
    勧誘の経緯や取引の経過等について詳しく事情聴取します。できれば事前に、先物業者とのやりとり等の事実経緯を記載したメモを作成していただきます。取引に関する書類等もお持ちいただきます。
  4. 4.取引の分析・検討
    弁護士が取引内容について客観的に分析し、当該取引の違法性について十分に検討します。
  5. 5.先物業者に対する請求
    先物業者に対し、取引の違法性について指摘した内容証明郵便で損害賠償請求を行います。
  6. 6.示談交渉
    先物業者の管理部担当者と示談交渉を行います。通常、面談による示談交渉の機会を2~3回持ちます。
  7. 7.訴訟提起
    示談交渉で話し合いが困難な場合には、早急に訴訟を提起します。被害回復の実効性を図るために、先物業者本体(法人)のほか、その役員らを訴訟の被告とすることも検討します。
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